唐辛子は、植物学的に言えば、ナス科トウガラシ属の多年草(熱帯では多年草ですが、冬場が寒い温帯では越冬できず一年草)カプシカムの果実です。メキシコ・中南米・西インド諸島など熱帯アメリカが原産の唐辛子は、アメリカ新大陸発見の偉業を成し遂げたコロンブスによってヨーロッパに初めて紹介されました(1493年)。西インド諸島では当時、既に相当多品種の唐がらしが栽培されていたようで、これに次いでコルテスが大変辛いタバスコという品種を持ち帰っており、その種子が各地へ広まり、現在の品種の大部分が生まれたと言われています。
わずか100年の間に世界各地に広まった唐辛子は、熱帯から温帯に至るまでの気候・風土に順応して生育し、色・形・大きさ・風味などのちがう様々な品種が生まれ、その数は2000種類とも3000種類に及ぶとも言われています。共通点と言えば、滑らかでつやのある皮を持ち、内部の空洞に数十個の種子を含んでいるということ位で、大きさは1.5センチから25センチ位まで、形状は丸いもの・角ばったもの・長いもの・細いものなど、そして熟果の色は赤色のものが多いのですが、白色・黄色・橙色・濃紫色など千差万別、辛さも唐辛子と言えば“辛い!”と想像されがちですが、全く辛味のないものから「口に火がつく」と形容されるほど強烈な辛味をもつものまであり、正に唐辛子は多種多様な植物なのです。
さてその呼称についてですが、日本における一般的な呼び名は勿論“唐辛子”ですが、様々な品種を生み出しながら世界に広まるうち、地名や性質・形状等々を表す多くの呼び名が付けられていきました。「チリーペッパー」「レッドペッパー」「唐辛子」は皆同じ唐辛子の総称名、というのが正解です。ちなみに、チリーペッパー、レッドペッパーは英名です。さらにチリーパウダーと呼ばれるスパイスもありますが、これは唐辛子にオレガノ、クミン、ディル、ガーリック、クローブ、オールスパイス、ブラックペッパーなどのスパイスを何種類かブレンドして作られるミックススパイスです。メキシコから北アメリカにかけての料理やスペイン料理などに用いられます。特に代表的なメキシコ料理、チリー・コーン・カーンには欠かせません。
ところで、日本・欧米で広く知られているピーマンは、別名スイートペッパーとよばれている辛くない唐辛子の代表的な一品種なのです。しし唐も同様です。又、スパイス名では別扱いされているパプリカも、スペインの航海者達によってヨーロッパにもたらされた一品種がハンガリーへと伝えられた後、ここで品種改良され、ハンガリーの特産品になったものです。