「スパイス」という言葉は、英語のSpiceに由来するものであり、「香辛料」または「薬味」と訳されて使われています。
古来から使い慣れてきた「薬味」という言葉は別として、つい最近まで「スパイス」とか「香辛料」という言葉には、私たち日本人はなじみが薄く、直観的に舶来品であるかのような印象で受けとめ、ましてや、シナモン(桂皮または肉桂)、クローブ(丁子)、ナツメッグ(肉豆く)、ローレル(月桂葉)、オールパイス(百味胡椒)などのスパイスはその名を文字や言葉で表しても一般消費者にはほとんど理解してもらえず、昭和40年代までは台所や食卓はおろか、商品として店頭に陳列されることさえ少なかったようです。
ところが、中世のヨーロッパや酷暑のインドなど東南アジア諸国では、広い国土の中で食糧を遠くまで運ぶ必要があり、腐りかけた肉や強い臭みをもつ野獣の肉を食するためにも、あるいは南方では暑さからくる食欲の減退を防ぐためにも、強烈な香味をもつ香辛料は必然的に重宝がられ、たくさんの種類のものが、しかも大量に消費されてきました。
それに対して、わが国においては、気候風土に恵まれてきた関係から、海の幸や山の幸を比較的容易に入手し新鮮なものを摂ることができたので、強い香りづけや消臭効果を求める必要がなく、素材食品本来の持ち味をそのまま生かすような調理法が主流をなしてきました。また、かつおぶし、こんぶ、しいたけの味に代表されるアミノ酸や核酸系の旨味によって、日本人の繊細な味覚は培われてきました。
従って、伝統的な日本料理に「薬味」を用いる場合でも、味が比較的淡白な素材にアクセントをつける程度に、ごく少量を添えるような使い方をしてきましたし、それほど多くの種類のスパイスを必要としなかったといえます。
また、私たち日本人の日常の食生活は、水産王国の名にふさわしく、古来から魚介類を多用してきたので、スパイスも魚にまつわるものが多いということが特徴になっています。 しょうが、山椒、わさび、にんにくなどは、その代表的な和風スパイスです。 |